2021/07/06

RetroEMBRAVE studyについて

RetroEMBRAVEという名前の論文があったよ
子宮頸がんについての報告かな❓
子宮頸がん"ではなくて"腟がん"についての報告だよ。2018年のESTRO37から3年ほど経過しやっと出たね。GYN GEC-ESTROの5施設からデータを集めたんだよ。
時間がかかったね〜😜
じゃあ、RetroEMBRAVE studyについてさらっと見ていこう😎

In this large retrospective multicenter study, IGABT for primary vaginal cancer resulted in a high local control with acceptable morbidity. These results compared favorably with two-dimensional (2D) radiograph-based brachytherapy and illustrate that IGABT plays an important role in the treatment of &

対象 148人、年齢の中央値は63歳で
フォローアップ期間の中央値は29ヶ月

半数がT2症例でリンパ節転移ありは31%。
扁平上皮癌が91%を占める。
初診時の腫瘍径は4 cmを境にほぼ半分ずつ。
原発腫瘍の局在は腟上中下で各18, 11, 26%ずつ。
2部位にわたるのが上2/3、下2/3とも2/3
全腟にあったのが16%であった。

同時併用化学療法例は64%
外部照射では3DCRT:IMRT (VMAT)が57%, 38%であった。
PDR:HDRは78%:22%
小線源治療時の画像はMRが52%
腔内照射が45%で組織内照射使用が55%であった。


全生存割合、局所制御、骨盤内制御など⤵️
有害事象
Grade 3以上が17%
Grade 3以上の泌尿生殖器系:消化管系:腟 = 8.1%, 3.0%, 8.1%
致死的な膀胱膣瘻が1例 (ただし、腟がん治療後外陰部Bowen病で一部再照射例)

予後因子
多変量解析ではN1のみDFSで有意差 (95% CI, 1.18–4.22, p = 0.013)
T2–4例で<80 Gy, ≥80 GyでLCで有意差 (Figure 5)
大雑把にこんなところだ😎
腟がん放射線治療の代表的paperとしておぼえとこう🦁

後方視的研究ではMDACC (1)とStanford大学 (2) からの報告が知られる。データベースに基づいて小線源治療と全治療期間短縮の重要性を示したpaperも最近あった (3)。比較的稀な疾患のため前向き試験はなく、日本でも2018年publishされた多施設研究が後ろ向き研究で大きなものだろう(4)🇯🇵
観察期間の中央値29ヶ月は彼らもlimitation内で述べているがいささか短い。確かに再発の多くは2年以内が多いのだが、発表からpublishまで3年以上要したのであれば、もう少し長期結果を出してくれていればと残念に思う。
D90%=80 Gyを境にT2–T4の成績に差が出る辺りは同じHPV関連としてGEC-ESTROが出してきた子宮頸がんに関するデータ同様ある程度、高い線量カバーが大事だということだ。EMBRACE II のstudy protocol (6) がD90%>90 Gyとしているところとは10 Gy程度差があり、今後、前向きのEMBRAVE studyでどの程度に設定するのだろうか。
2020年にGEC-ESTRO working groupが腟がんに対するIGABT時の標的体積の設定についてのrecommendation (7) を出してきており着々と準備をすすめているのが伺える。


このrecommendation内では子宮頸がんの診察時所見の記録としてもはや当たり前に使う図と類似の 腟がんversionがsupplementaryにあるので 日常の診療でぜひとも使用したいね😎





参照文献
1. Int J Radiat Oncol Biol Phys . 2005 May 1;62(1):138-47.
2. Gynecol Oncol . 2007 Jun;105(3):641-9.
3. Brachytherapy . Jan-Feb 2021;20(1):75-84.
4. Int J Clin Oncol . 2018 Apr;23(2):314-320.
5. Cancers (Basel) . 2021 Mar 23;13(6):1459.
6. Clin Transl Radiat Oncol. 2018 Feb; 9: 48–60.
7. Radiother Oncol . 2020 Apr;145:36-44.



以下腟がんメモ
腟がんは婦人科腫瘍で3%未満と稀な疾患で子宮頸がんと同様ヒトパピローマウイルス (HPV) が主たる発症因子 (80%)である。出血・帯下・掻痒・性交時痛などの症状を呈することがある。20%の患者は偶然子宮頸がんのスクリーニング時に見つかるとされる。腫瘍が外子宮口や外陰に進展すれば腟がんではなく、子宮頸がんや外陰がんと扱うことが定義されている。50%未満の患者で初発腟がん判明時にはすでに良性疾患、出産関連、悪性腫瘍関連で子宮摘出をすでに受けて子宮がないことがある。
領域リンパ節は原発が腟上部2/3にある場合、閉鎖リンパ節、内腸骨リンパ節、外腸骨リンパ節、骨盤リンパ節であり、原発が腟下1/3にある場合、鼠径リンパ節、大腿リンパ節である。
主な予後良好因子としてHPV陽性、組織型が扁平上皮癌、進展範囲が腫瘍の腟の1/3未満、上1/3の発生、腫瘍径が小さいこと、子宮摘出術後などがある。 主な予後不良因子としては進行期、腫瘍径が大きいこと、有症状、リンパ節転移あり、非上皮性腫瘍、後壁発生、HER-2/neu強発現の扁平上皮癌、p53変異、全治療期間が長い、HIV関連などがあげられる。